周防正行監督の話題作、「それでもボクはやってない」を観に行きました。妻が先週観に行き、先を越されてしまっていたので、あまのじゃくな私としてはどうしようかなあと思っていたのですが、あまりにも前評判が良いので、映画好きとしてはチェックしないわけにはいきませんでした(笑。
ストーリーは、女子高生に電車内で痴漢行為をしたと間違われ、冤罪に苦しむフリーターの青年の裁判劇です。周防監督はこれを映画化するために何回も実際の裁判を傍聴されたらしく、かなり忠実に現在の日本の刑事裁判の実態を描いていると思われます。
罪を認めれば罰金だけですぐ出てこられたり、取調べで言いもしないことを捏造されたり、実際の裁判では揚げ足をとるような尋問をされたり、よくドラマで見聞きすることではありますが、もし自分だったらどうするだろうか?と少し背筋が寒くなる内容でした。
裁判所というのは真実を明らかにする(真犯人をつきとめる)所ではなく、有罪だと告発をする検察側の主張に対して本当に有罪であるのかというのを吟味する場所でしかない、(英語でいうところのguilty or not guilty,有罪かもしくは有罪でないのかという意)というのがおそらく監督が一番いいたいとこなんだろうなあと思います。
2時間を超す、短い映画ではないのですが、つい感情移入して見入ってしまうのであっという間にエンディングでした。そういう意味では面白い映画なのでしょうが、いつもながらの個性派ぞろいの役者さんが好演していながらも、私はどことなくルポルタージュを観ているような気がしてなりませんでした。リアリティーを追求するのも良いですが、映画なのですからもっとエンターテイメント色があってもいいなあと思いました。特にストーリーの核でもある弁護士役は紋切り型で面白みがなく、デフォルメしてでも周防監督ならではのユーモアをもっと出して欲しかったです。
センスのある監督が、こういう社会派の映画をつくるのは映画ファンにとってうれしいことですが、亡くなった伊丹十三さんのスゴさを思い出したのは私だけではないはずです。
甘味処 川越 あかりや