話題の映画、山田洋次監督の「武士の一分」を観に行きました。
藤沢周平シリーズの前2作はDVDで観たことがあり、本作のあらすじもだいたい分かっていたので、じっくりと画面の隅々まで楽しめることができました。一日1シーンだけの撮影だったというだけあって、照明の仕事ひとつとっても、細部にこだわる演出など、ていねいに作られているプロの映画だなあと感じました。
たとえば、檀れい演じる主人公の女房。主人への愛から上役に手篭めにされてしまうわけですが、そんなシーンなど出さずとも、清楚で美しい色白な彼女が着物で座る後姿や首にうっすら汗をかかせるだけで主人公の無念さ・やるせなさを表現しきっています。(これは男性なら多いに共感していただけるのでは・・)
それと、徳平にボソっと語らせる季節感や江戸時代の下級武士の静かでつつましい日常生活の空気感。前2作でもそうですが、質素でも本当に豊かな暮らしというものを考えさせられます。
ちょうど今、読売新聞で山田監督が連載コラム「時代の証言者」を担当しているのですが、映画製作における脚本書きの重要さを自身の半生を通して語っています。黒澤明さんも確か、映画を志す若者には、時間さえあれば、「脚本を書け!」と言っていたらしいですが、逆に言えば本作のような、恐らく原作を読めばフツーの話でさえも、良い本が書ければ人を感動させる映画が作れるってことですよねー。今回も筋は読めるものの、ついほろっとさせられてしまいましたー。:cry:
それと配役の妙。檀れいの清楚な美しさ(この人、洋服よりも断然和服が似合いますね)、私生活からもこの配役を観客に納得させる坂東三津五郎(笑)、いい味だしている笹野高史はこの映画には代役は考えられないですね。
娯楽映画としては申し分ない2時間の時代劇ですが、もうこのパターンはいいかなあというのが正直なとこで、レンタルDVDでもよかったなあというのが本音です。
甘味処 川越 あかりや