忘れられない一日
毎年6月のカレンダーをめくる時は、ああ今年も半分終わっちゃたなあと思うのですが、それと同時に現れる7月1日の日付を見るたびにあの日のことを思い出します。
あれは忘れもしない小学4年生のときでした。
仲のよい友達の家に初めて遊びに行こうとして、学校が終わってからまっすぐ家に帰りランドセルを置き、まだそんな離れていないはずのその友達を追いかけて行きました。
確かこっちの方向のはずと思い込み、歩いていくのですが友だちの後姿は見つかりません。いや、でも歩いていけば必ず友達に会えるはずと家さえ知らないのに、今考えれば何の保証もない確信を抱きつつ、テクテクと歩いていきました。
なんとなく見たことのある風景が歩く気力を失わせない原動力だったのでしょう。それでも30分~1時間も歩けばすっかり未知の世界に入り込み、完全に迷ってしまいました。いつか友だちに会えるはずという希望はいつか知っている道に戻れるはずという淡い期待にすり替わり、そのうちに早く家に帰りたいという泣きたくなるような不安感に襲われました。
日の長い季節でしたからそれでも歩けたのでしょう。今と変わらない小心者でしたから(笑、まわりの大人に迷ったことを告白する勇気もなく、さすがに暮れなずむ頃にはまずいと思ったのか、とうとう庭の木を手入れしている農家のおじいさんに
「すいません。ボク、迷子になっちゃいました。」と言いました。
自宅の住所と電話番号を教えて連絡をしてもらい、驚いた父がトラックで迎えに来ました。待っている間、親切なご家族がジュースと漫画本を与えてくれたのですが、父親の顔を見た瞬間に安心したのかどっと涙があふれてしまいました:cry:
追いかけていった友達の家は確か旭町だったと思いますが、なんと最後に行き着いたのは川越市下老袋。まったく正反対の方向ですし、のべ7~8キロは歩いたのではないでしょうか。
古い農家の土間の佇まい、夏草や香取線香の匂い、虫の声、そして絶対的な不安感。そんな感覚と共にあの7月1日の出来事をわたしは一生忘れないと思います。