逃亡くそたわけ
先日に引き続き、絲山秋子さんの逃亡くそたわけを読みました。
精神病を患っている男女2人組の病院からの九州逃亡劇(ロードムービーのよう)なのですが、劇的な展開なのかなあと思いながら読み進めましたが筋書きはフツーでした。
亜麻布二十エレは上衣一着に値する。
亜麻布二十エレは上衣一着に値する。
最初の書き出しが、主人公の幻聴(じつはマルクスの資本論です)の繰り返しから始まるのですが、この精神病の闇の部分の表現からも分かるように、短い本編ですが描写力のうまさには参りました。逃亡劇なのに結局のところ追っ手は現れないのですが、そこが精神病患者の追い詰められた焦燥感をうまく表現しているなあと思いました。会話も現代の若者の喋りながらも博多弁丸出しなので、単調な展開なわりに読ませます。
私ももう13年前くらいになりますが、川崎からフェリーに乗って九州をバイクで一周したことがあるのですが、想像していたよりも大地の広さに驚いたのを思い出しました。今、ちょう大雨の甚大な被害で大変ですが、私が旅したときも雲仙の土石流の爪痕とかを目の当たりにしたり、こんなとこにも人が住んでるんだなあと感嘆するような広さと懐の深さを感じました。
阿蘇の圧倒的な迫力、五島列島の風光明媚な海岸沿いの景色、吉野ヶ里のほうののどかな農村風景、大隈半島あたりの寂しさ、焼きついた九州の印象を久しぶりに思い出しました。また、行きたいなあ~。