あなたに不利な証拠として
ひさびさに海外ミステリーもの、書評で話題になっていたローリー・リン・ドラモンドさんの「あなたに不利な証拠として」を読みました。
短編集なのですが、2段組ということもあり意外に読みごたえがありました。主人公はすべて女性警察官で、作者が実際に制服警官だったこともあって、随所に具体的で緻密な現場の生々しい描写がありました。・・・と書くと趣味の悪い覗き見趣味的な小説に聴こえますが、この本の主題はむしろアメリカの真面目に実務にあたっている、フツーの警官の心の問題の小説です。
あとがきにも書かれてますが、作者は全警察官の中の1%の優秀な人と1%のどうしようもない人たちを除いた、98%のフツーの善良な警官の精神的な内面を、料理をつくる、酒を飲む、庭の手入れをする、恋人や友人との付き合い、上司や部下との関係といった日常を丁寧に描きながら、実はわたしたち日本人とは決定的にちがう感覚、銃社会(職業的にも常に死と隣り合わせ)のなかで精神的に病みながら生活をしているところを、全編に流れる淡々とした筆致で収めています。
たまたま読んでいる最中に、日本で犯人が民家に立てこもり、機動隊の方が亡くなられた事件がありましたが、この本でのアメリカの警官の容疑者の確保に対する厳しさ(マニュアルや銃の扱い方)を読むと全く不謹慎ながら、意識の差を感じてしまいました。
ちなみに題名は読み終わるまで気が付かなかったのですが、ミランダ警告(あの容疑者を確保する際の、被疑者の権利を読み上げるヤツです)の一部でした。