硫黄島からの手紙
話題作、「硫黄島からの手紙」を観に行きました。
2部作の前作、「父親たちの星条旗」が良い作品だったので、なかなか同じレベルの作品を作るのは難しいだろうなあと漠然と思っていたのですが、こちらも一流の作品でした。
鑑賞後に一番強く思ったことは、本当にこれがアメリカ人の作った映画なのか、ということです。今まで、いや現在でも西洋人が日本人を描く映画は、どこか勘違いしたものが多いのが実情ですが、エンドクレジットに松竹や東映の文字がでてくるのではないかと思うくらい日本映画っぽかったです。これは本当にスゴいことだと思います。
肝心の映画の中身ですが、まさに戦争の悲惨さ、不条理さを徹底的なリアリティーをもって描いています。(スピルバーグは映像的に徹底的なリアリティーを演出するために重要な仕事をしていると思います) 前作でもそうでしたが、英雄を作り出すわけでもなく、ただ淡々と地味に硫黄島を死守する日本兵の立場を冷静に見つめているわけです。
陳腐な戦争映画にありがちなヒーローを否定し、たとえば米軍側に投降する兵士があっさりと殺されていまうシーンや前作の味方の弾に当たり死んでしまうシーンなど(ここで、スピルバーグなら助けているだろうなあというシーンでもあります)、戦場での人間の行動の本質を説いているように感じました。アメリカ側、日本側のそれぞれの視点からの2部作というところに、イーストウッドさんが一監督、一俳優でありながら、リベラルでかつとても硬派なジャーナリストなんだなあと強く感じました。
よく言われることばですが、賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。こういう冷静でフェアな視点の戦争映画はぜひ、中学生くらいに学校の授業で鑑賞させるべきだと思います。