ノーカントリー
見逃していた話題の映画「ノーカントリー」をDVDで見ました。
アカデミー作品賞をとったということだけ知っていたのですが、なかなか味わいの深い玄人好みの映画でした。
(以下ネタばれ)
手に汗をジト~っとかくようなバイオレンスを扱いつつ、決して観る側に説明的ではなく考えさせる演出。極悪非道なストーリーに少しの救いを期待する観客をあっさりと裏切り、突然訪れる結末とエンドロール。多くの人は戸惑ってこの映画の意味について「いったい何を言いたいのか」考えると思います。
芸術のひとつの技法が比喩であるならばこの作品の価値はすごく高いものですね~。私は「犯罪の動機さえ理由付けができない混沌とした現代(アメリカ)社会」を表現したいのかなぁくらいに感じたのですが、どうもすっきりしない。。後で調べたら、ある映画批評家がこの主人公のシガーは「国際社会でのアメリカの立ち振る舞いそのもの」と書いていてなるほど、と思いました。
確かに自分の中だけで完結している絶対的な規範のもとに行動するところは米国を連想させますし、ラストシーンの信号が青のところをフツーに通過しようとして(そういう米国も日常は皆と普遍的な規範の中に居るという意で)で突然横から飛び出してくる車にぶつけられるなんてのは、テロリズムを思い起こしますよね。
監督のコーエン兄弟はこの映画の解釈についてはあくまでも自分で語らないとか・・。観る側に解釈をゆだねる姿勢いいですねぇ。作品の捉え方は人それぞれでしょうが、自己批判的な隠喩を感じさせるこの映画に作品賞を与える米国の懐の深さも感じました。