罪と罰
このところ世界名作文学がマイブームで、恥ずかしい話ですが、この年齢になって初めてドストエフスキーの「罪と罰」を読みました。
う~ん、深い作品でした。これが書かれたのは140年前。日本は江戸末期ですが、すでにロシアにはこれほどまでに人間の心理を徹底的なリアリズムで描写していた作家がいたんですね。例え万人を救うような思想があったとしてもヒト一人を殺めて陥る苦悩の日々。なぜ人を殺めてはいけないのか?という命題の答えは時代は変遷しても変わらないことが分かりました。
誰でも知っている名作ですので、私もあらすじは知っていたのですが、結末は意外でした。しかも最後の最後、ヒューマニズムに目覚めるまで己の思想を改めないとは・・。折りしも、下巻を読んでいるときに山口県光市での事件の差し戻し審の判決があったのですが、改めて贖罪と応報的な罰について考えさせられました。
新潮文庫版の工藤精一郎訳を読んだのですが、いささか賞味期限切れの翻訳のような気がします。ただその分、重厚感があり、また読み返してみたいエピソード、描写がいくつかあります。名作たる所以ですね。
学生のときに恩師に薦められてロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」をあえぎながら(笑、読了したことがあるのですが、苦悩するあたりの描写、ぎっしり詰ったとっつきにくい文章に当時を思い出しました。
それにしても姓名の短い表記に慣れている日本人にとってあのロシア人の名前の呼び方は読書の障壁ですねぇ。
主人公の名前だけでもラスコーリニコフ、ロージャ、ロジオン・ロマーヌイチ。もう、かんべんしてくれ~って感じです。岩波文庫版が好評のようですが、どちらにせよ登場人物紹介は必須だなあと思いました。