美晴さんランナウェイ
このところミステリー小説の読書が続いたので、もっとさらっと気持ちの良い小説が読みたいなあと思いつつ、好きな山本幸久さんの新刊「美晴さんランナウェイ」が出ていたので早速読んでみました。
いつもどおり歯切れが良く、センスの良い笑いとちょっとホロっとさせられるドラマメイクで一気に読了しました。お嫁になかなか行かない28歳の奔放で自分勝手な女性、だけどちょっときれいな叔母さんを同居する姪っ子の女子中学生の目線から描いた家族小説です。
ストーリーがすぅーっと入ってきて何も考えずにホームドラマを見るように気持ちがほんわかしたまま終える内容なのですが、その裏には恐らく山本幸久さんの考える「幸せのかたち」がうまーく表現されています。最近の殺伐とした事件報道や家族の絆の崩壊、それをネタにして創作をする作家は多いと思いますが、山本さんの素晴らしいのは説明的ではなく、あくまでも平易な文章で、ある家庭の日常生活を描きながらそれをちりばめているところです。
ストーリーの時代設定はとても昭和的な匂いがするのですが、どこを読んでも明らかには年代を決めつけられないところなんかも、幸せのかたちっていうのは時代を超えた普遍的なものなんだよー、って諭されているようです。
それにしてもうまい。前のインプレでも書きましたが、山本さんはもっと有名になるのではないでしょうか。ドラマ・映画化されて有名になるか、直木賞が先か?といったところでしょうか。